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開発エピソード

『鉄拳7』ができるまで(後編)

『鉄拳7』ができるまで(前編)に引き続き、今回も『鉄拳7』ができるまでの開発エピソードをお届けします。
後編では、没入するストーリーとバトル操作の融合など、徹底的にこだわりぬいた、クリエイターの開発エピソードをご紹介します。

 
徹底的にこだわりぬいた、没入するストーリーとバトル操作の融合

池田: 家庭用『鉄拳7』ではストーリーモードが一番苦労しつつもこだわったところです。

船田: カットシーンだけで、80分ぐらい。ちょっとした映画を一本作るぐらいのボリュームです。

池田: そのカットシーンをうまく見せつつも、バトルへの繋ぎをどうしてもシームレスにスムーズに移行してあげたいという一心で頑張りましたね。
やっぱりストーリーへの「没入感」を極力削ぎたくなかったので、プログラマーや他のセクションの人がせめぎ合いをして、実装を含めて最後まで苦労していたところですね。

大森: 難しそうですね、確かに。

池田: E3(※1)で初めてそれを見せるという機会があって、実際ただシームレスにするだけだと、「ふうーん」で終わっちゃうじゃないですか。
“鉄拳ならでは”の面白さというか驚きを与えたくて、通常のゲームだと「カットシーンの最中に殴られる。」その後に立ち上がった所からプレイ開始となるわけですけど、鉄拳では、「殴られて、吹っ飛んだ瞬間」からプレイ開始。
「え、今始まったんだ!」というような所からプレイがはじまることで、「ちょっと驚き」だったりとか、「油断できないなーこれ、」っていう瞬間を作って、常にドキドキしながら真剣に物語に没入してもらおうという風にしたのが一番こだわったところです。

※1:E3
Electronic Entertainment Expoの略。世界最大のコンピューターゲーム関連の見本市で、各社から最新作がお披露目される。

大森: なるほどね。

池田: ストーリーモードではいろんなキャラクターを使う場面があるのですが、自分が使いこなせるキャラクターなんて限られているわけです。
ほとんどが一度も操作すらしたことないキャラクターなので、当然うまく動かすことはできないですよね。
さっきまでムービー中ものすごくカッコよく行動していたキャラクターから、カッコ悪いプレイになってしまい一気に冷めてしまいます。
そこでボタン連打することで簡単に必殺技やコンボが出せるような補助機能を実装して、誰でもカッコよくキャラクターを動かせるように工夫をしました。

大森: 演出担当はだいぶ苦労されたのではないですか?



岸 宏美(きし ひろみ)
映像演出/『鉄拳7』シネマティクスディレクター。


岸: そうですね、やっぱりさっきの、「カッコよく始めたい」「カッコよく繋げたい」というのがあるんで、豪鬼が平八と対峙していて、ムービーで画面いっぱいに波動拳が出たときにはユーザーは「カッコいい」と観戦者として感動しているんですけど、そこから自分が「避ける」となった時に「やばい!」と身構える。
今まで観戦していただけの人がキャラクターと一体化する瞬間ってデモからゲームに移るところだと思うのです。
そこが気持ちよくできないと、たぶん入り込めなくて。『鉄拳』ってやっぱりキャラクターを自分と一体化していたりだとか、こんなキャラみたいになりたいだとか自分を投影する対象だと思うので、そこをどうやって見せていくか?操作感もそうだし、カメラワークも含めて、スタッフの中でも何回も会議しました。時間をかけただけあって、気持ちよく繋がった時に自分がヒーローになれる、対戦とは別の側面でキャラクターを好きになれるモードになったかな、という感じがしています。

大森: ゲームのカメラ、特に鉄拳では若干固定気味になっちゃうかもしれない「ゲームのカメラ」と「演出のカメラ」ってすごく相性が悪いというか、異質な感じがして、 技術的な意味でシームレスに繋ぐとか、カットで繋ぐことはできなくはないのだけれども、なんか観ている時に違和感が出るというか。「ちゃんと繋げる」には苦労しそうだな、という印象があります。

岸: ストーリーモードでは「ちゃんと繋げること」、そこばっかりずっとやっていましたね。



山岸 剛朗(やまぎし たかお)
モーション/『鉄拳7』アニメーションディレクター。


山岸: 鉄拳はインゲームモーションと演出モーションのデータの形式とか組み方が違うので、そもそも繋がらないのです。
全然別のデータの持ち方をしているものを「繋げて」と言われて、最初は「いや、無理でしょう」と。だから、ものすごくアナログな方法で無理やり繋いでいるのです。ちからわざで。

岸: カメラの見せ方とかも直前まではムービーなので、そっちは割と実写にのっとったレンズの選択をしたり、被写界深度を付けているのです。
『鉄拳7』を作るときに「次世代感」とか、「リアル」みたいなものが話題に挙がった時に、私自身のバックグラウンドが実写寄りのほうだったんで、これは自分の知識を生かせるなあと思ったのですが、いざリアル志向からゲームに繋ぐってなった時に、ゲームだと被写界深度をかけると「背景がぼけて気持ち良くない」とか、アップで抜くのはカッコいいけどそれじゃパンチが見えない、とか指摘がありました。
ムービーから繋ぐときはゲームのカメラワークに寄せられるようにプログラマーさんに「ゲームのカメラと演出のカメラをブレンドしてもらう機能」を付けてもらって、演出サイドも最後はゲームの画角につながるカットになるように、カメラと被写界深度を調整しています。

大森: なるほどね。

岸: そこが気持ちよくブレンドされて、はじめてシームレスになると思うのです。調整はすごく長い時間していました。

中林: バトルの「入り」もそうなのだけど、「終わり」もすごく大変でした。
終わりもシームレスに繋がるのです。バトルが決着してから次のデモとか、ムービーとかに繋がるときも、ちゃんと絵的に状況が繋がってないとすごく違和感が出てしまいます。繋げるようにするのがすごく大変でしたね。
「そのバトルの終わりはこういうポーズで倒れてないと」次の絵に繋がらないとか。そういうのを、プレイヤーがキャラを自由に動かせる中で最終的にそこに導いてあげる、っていうのを何とか組まないといけなくて。

池田: バトル中に1P側と2P側で入れ替わることも当然あって、かつ壁際であったり、とかね。
これ、どうすんだろうってアイデアを出すときが一番苦労しましたね。

中林: そこはけっこう最後のほうまで出来ていなくて、すっごいチカラワザで、夜な夜な必死に取り組んで解決したところです。

鉄拳ならではのキャラクターメイキング術とは?


小田嶋 友子(おだじま ともこ)
デザイナー/『鉄拳7』アートディレクター兼リードキャラクターディレクター。


小田嶋: 鉄拳の新キャラクター作りは、「こういう技を作りたい」「こういう技をする人を作りたい」から入って、キャラクター人物像の背景とか何にもないところから始まるのです。
じゃあこのキャラクターは、どういう人なの?というところを作らなきゃいけないのですが、企画の人だけではなくて、ビジュアルからも提案して、その人は一体何が好きなのかとか、どういう性格なのかっていうのを固めて、そのあとデザイン作業に入るという感じです。
鉄拳チームでは常に、決まった一人の人がデザインするわけではなくて、色々な人に描いてもらいます。社外の人も社内の人も、チーム外の人も。別に絵が上手い人だけが描くわけじゃなくて、絵がそんなに上手くないけれど、デザイン能力が高い人っていうのはやっぱりいるのでそういう人のアイデアも吸い上げます。ですから絵が上手くない人にもチャンスがあります。一部の人だけの特権にはしない。いろんな人のアイデアを持ち寄って、より良いものを創ることを目標としています。
デザインを選定する際、最初に設定したその人(キャラ)らしさというベースを元に、「この人こういう服着ないよね?」「この人お金持ちだからもっといい服着るよね?」といったキャラクター付けに沿って取捨選択していきます。
デザインが決まりモデルが出来た後、実際に画面に出して構えさせ、カッコ悪い場合はモデラーのバランス調整となり、センスの魅せどころになります。

大森: モデルが全部終わってからモーションを付けるのですか?

山岸: いや、同時ですね。

小田嶋: モーションさんには先に体格だけ最初に決めて、裸のモデルをお渡ししたり。

山岸: だいたいこんな感じのキャラクターにしますとか。概要だけ来て。

池田: 最初はだいたい格闘技の流派とか、性格だけなんとなくキーワードで伝えるんですよ。
「普段はナヨナヨして、たまに泣きます」とか。だけど「バトルモーションは本格的な格闘技のようにカッコ良くしてください」とか、けっこう真逆のオーダーなどをしたりするので(笑)

山岸: 「ちゃんとしたお題」で来るときと、「なんとなく」で来るときがあって。それでもモーションキャプチャーの準備もしないといけない。

小田嶋: ふわっとした状態で始まりますもんね。

山岸: キャラクターによって進め方が違っていて、アニメーターはキャラクターごとに担当を置いています。
企画側の担当者と一緒に考えながら作る人もいれば、僕とかがそうなのですが自分の主観で作りたいので、あんまり人の言うことを聞かないで作ってしまう人もいる。
そのキャラクターによって、どんな作り方をするか担当者を当て込んでいって、最終的に良いものが出来ればいいかなと。

小田嶋: あっているとかあってないとかありますもんね、担当者の性格が。

大森: モーションを見てから、ちょっとデザインをいじったりとかはあるのでしょうか?

小田嶋: それはあんまりないですね。逆にデザインで、どうしてもめり込んじゃうみたいなのがあったら、モーションさんにお願いしてずらしてもらうみたいな、そういうことはありますね。

池田: モーションが出来上がってからデザインやモデルの造形を変更するということはあんまりやっていないですね。

大森: そこはある程度、お互いの限界が分かってやれているのですね。

小田嶋: モデラーがちょっとやったほうが早ければモデルでやっています。

山岸: たまに「ちょっとだけ足太くしてもらえませんか?」みたいなことをこっそり小田嶋さんに言いに行ったりしていますね。ちょっとだけ!ちょっとだけおねがいします!みたいな。
みんなあんまり気付いていないけど、ちょっとだけ太くなっている。

小田嶋:わからない程度に。

豪鬼、ギースが参戦!ファン納得のキャラクター像を再現するには?

大森: 『鉄拳7』では他の会社の格闘ゲームキャラクターを登場させるコラボがありました。相性が良さそうに見えて、実は他の格闘ゲームのセオリーが全く違うものを持って来て。よくぞ、入れられたなあと感じました。

小田嶋: モデルデータをいただかずに、一からフルスクラッチで作成しています。
豪鬼、ギース両方ともとても有名かつレジェンド的なキャラクターなので、「誰これ?」って言われないよう、留意して進めました。
モデリングもそうなのですが、構えも全部ひっくるめて一つのキャラクターなので、モデルの作り込みよりも先にモーションさんと協力して構えをまず作って、シルエットが一緒になるよう、実際にフレーム毎にキャプチャ画面を並べて見比べて、一緒かどうか画像を重ねて検証しました。
でも形状はずれていないのに、動かしてみると印象が違うなんてことがあって。体格についてもKOF(ザ・キング・オブ・ファイターズ)(※2)の世界観だと、鉄拳とは違った絵作りなので、『鉄拳7』でのギースにする際には重ねて見るというほかに、自分も含めた格闘ゲーム世代皆が思う印象、思い出に残っている彼らの姿のイメージをプラスアルファして、他の企画さんと一緒に詰めていった感じですね。


© SNK CORPORATION ALL RIGHTS RESERVED. TEKKEN™ 7 & ©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

池田: みんなが各々そのキャラクターに対する持っているイメージがあるのです。
最初は各々がああだこうだ言うのですが、そこを上手くデザイナーやアニメーターが個人の意見をくみ取りながら豪鬼もギースも制作していましたね。
まずは見た目や動きをぴったり合わせても、あれ、なんか違う?とか。何が違うかをみんなで徐々に突き詰めていって、少し体型をいじってみたり、構えをほんのちょっとだけずらしてみたりだとか、細かくいろいろやっていって、「これどう?」「これなら、大丈夫」と全員がキャラクターにイメージ持っているところにたどり着くところが一番デザイナーとアニメーターが苦労しているところじゃないかと。

大森: 監修についてはどうだったのでしょうか?

池田:カプコンさんの場合は『ストリートファイター×鉄拳』(※3)の際にお付き合いがあって、その時は逆に監修する立場でしたが、細かくやっていたら開発の弊害になってしまうし、良いものを作ってくれると信頼しているのでお任せしますというスタンスだったんですね。
だから、僕らが豪鬼を作っている間も同様に細かい監修はなく基本はお任せしていただけました。実際に指摘があったのは背中の「天」の文字のバランスくらいでそこしか修正してないです。「――あとは好きにやってください。何してもOKです。」「カスタマイズすごいことになりますけど、良いですか?」「――ああ、大丈夫です。ただ一点、髪の毛だけは、豪鬼のアイデンティティとなりますので、いじらないでください。」それぐらいでした。

※3:『ストリートファイター×鉄拳』
株式会社カプコンより発売された、家庭用ゲームタイトル。
「ストリートファイター」シリーズと「鉄拳」シリーズのキャラクターが登場する対戦格闘ゲーム。

(株)SNKさんとは初めてのお付き合いですのでお任せというわけではないですが、監修としては特に厳しくは無く、実際にギースのモデルが出来上がってきた際に顔に対して目の印象やオールバックのボリューム感で多少指摘を受けたくらいでスムーズにやりとりさせていただきましたね。

小田嶋:ホントに数回だけで。

池田:ゲーム中の技についても「いい意味で」監修していただいています。
ダメなところを指摘されるのではなく、「こうするともっと、ギースらしくなりますよ」といったアドバイス的な意見をいただく感じです。
やはり、お互い格闘ゲームを作っているという点で話も早く、3D格闘ゲーム上で表現した豪鬼の出来栄え含めて我々が制作するギースに関しても信頼していただけているなあっていう印象はあります。

大森: それじゃあもうほんとに、自分たちが納得するところのクオリティを目指して良かったのですね。

池田:そうですね、「原作を越えるものをお見せしたい」という思いでプロジェクトメンバーは開発しているので、そこは労力をかけて良かったなあと思います。
今回のコラボで鉄拳だけでなく、格闘ゲーム全体のコミュニティとして盛り上がって活気づくような話題作りが出来たところを評価いただけている印象ですね。

大森: 「鉄拳」開発プロジェクトは最新の開発手法の導入などでも毎回先駆けとなって新しいことに挑戦していて、それを結果につなげている頼もしい存在です。今後の挑戦にも期待しています。皆さん、本日はどうもありがとうございました。

 

※記載されている会社名・製品名は、各社の商標、または登録商標です。
(※2)「ザ・キング・オブ・ファイターズ」は株式会社SNKの登録商標です。
(※3)「ストリートファイター」はCAPCOM U.S.A., INC.の登録商標です。

「鉄拳7FR」
TEKKEN™ 7 FATED RETRIBUTION & ©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.
©CAPCOM U.S.A., INC. ALL RIGHTS RESERVED.

「鉄拳7」
©CAPCOM U.S.A., INC. ALL RIHGTS RESERVED.
TEKKEN™ 7 & ©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

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